時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

年金積立金を狙うのは計画倒産企業のリスク

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用資金の規模におきまして、世界第一の機関投資家となっていることは、性悪説にもとづきますと、この巨額な資金を狙う人々が生じるという問題を引き起こしている、もしくは、引き起こす可能性があることを指摘することができます。

 

 この点、昨日扱いました環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資である「ESG投資」は、財務状況に対する評価が甘くなる点におきまして、投資先によって計画倒産されてしまうリスクがあります。すなわち、環境に優しいという理由によって、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の投資先に選定されるとなりますと、ソーラーパネルを並べただけのような小規模電力会社や採算を度外視した経営を行う偽善的な企業が、乱立されて投資を受けることになります。こうした企業の設立目的は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)からの投資資金によって、社会に貢献し、かつ、企業収益を挙げることにあるのではなく、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)からの投資資金を受けることにあると推測することができます。すなわち、投資資金さえ得られれば、当該企業の経営は、いわゆる“あとは、野となれ山となれ”であり、企業の設立者にとりましては、倒産してもかまわない、ということになるのです。悪質なケースでは、最初から、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)からの資金を得ることを目的とした“計画倒産”が仕組まれている場合もあるのかもしれないのです。

 

 このように考えますと、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による「ESG投資」は、特に、要注意であり、投資先を日本国内の日本人従業員の割合の大きい日本企業に絞るという対策も一案かもしれません。こうした企業でしたならば、その社員には、日本の年金制度に加入している日本人が多いはずですので、GPIFに莫大な損害を与えて、年金制度を崩壊させるといった“自らの首を自ら締める”ような計画倒産を行うリスクは低いからです。いずれにいたしましても、性悪説を踏まえますと、「ESG投資」には、特に大きなリスクが潜んでおり、年金制度の重要性に鑑みますと、決して“お人好し”になってはいけないと言えるでしょう。

 

(続く)