時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

法は自由のためにある

 規則やルールは、とかくに、人々の自由を縛るものとして嫌われがちです。規則やルールは、権力者が勝手につくったのだから要らない、という主張もよく耳にします。こうした考えに基づきますと、法と自由は両立しないことになるのですが、本当は、法がないと自由もなくなる、というのが真実のようなのです。

 権力分立論で知られるジョン・ロックは、「法律は自由の証」という有名な言葉を残しています。この言葉は、法があればこそ、個人の自由や権利が保障され、その侵害者を正当に罰することができる、ということを表現したものです。仮に、法というものがこの世から消えてなくなってしまいますと、悪い人が現われて他者の自由や権利を侵害したとしても、その侵害行為に対する救済やペナルティーは一切ないことになりましょう。無法状態とは、悪人が跋扈する社会なのです。

 個々人の間に、相互に同じ大きさになるよう、自由と権利の範囲を線引きし、お互いに相手の領域を侵害しないようにするためにこそ、法は、存在します。法を守るということは、自分自身の自由を守ることでもあるのです。