時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

壊すのは簡単、造るのは大変

 いかに優れた制度であっても、壊してしまうのは簡単です。人類が、民主主義、自由、法の支配、平等といった価値を具体化させた統治制度をつくりあげるには、長い長い年月がかかりました。人類は、時には闘い、時には知恵を絞って、ようやく多くの人々が納得して受け入れられるような統治の仕組みを編み出してきたのです。そうして、統治制度とは、永遠に未完のものであって、今日に生きる私たちもまた、その過程にあります。

 しかしながら、こうした人類の知恵と努力の結晶を壊してしまうことは簡単なことです。力と恐怖で人々を支配し、反対者を排除してしまえば良いからです。つまり、最も単純な”さる山の論理”に戻してしまえばよいのです。

 本日の自民党の総裁選挙において、日本国の首相が決定されます。福田政権となりますと、人権擁護法案や外国人への地方参政権の付与、ならびに、夫婦別姓など、国民に直接影響を与える法案が提出されるのではないかという懸念が示されています(産経新聞朝刊)。これらの法案が可決された場合、日本国の統治制度において、民主主義、自由、法の支配、平等といった諸価値が損なわれる可能性があることを考えますと、時代の逆戻りに思えてならないのです。

 壊すのは簡単ですが、造り直すためには、その何倍の時間と努力が必要となります。政治家の方々は、ぜひ、賢明な判断をお願いしたいと思うのです。