時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

悪が善に倒錯する北朝鮮

 新聞報道によりますと、北朝鮮は、1994年の枠組み合意を無視し、NPT体制に反して強硬に実施した核実験を「偉大なる奇跡」と自画自賛していると言います(産経10月10日付朝刊)。国際社会を騙して恐喝の手段を獲得したことが、どうして”尊厳の高い民族”の”偉大な国”の讃えるべき行いとなるのか、全く価値観が倒錯しているとしか言いようがありません。

 そもそも、核兵器は、技術的な能力から見ますと、核を持たない多くの国々でも開発が可能であると言われています。おそらく日本国もまた、その潜在的な能力は保持していることでしょう。しかしながら、NPT体制を順守し、核拡散防止を是とするからこそ、核非保有国は、技術がありながらもその開発に自己抑制を課しているのです。この意味において、北朝鮮の技術力が優位しているのではなく、北朝鮮が核開発を行えた理由は、国際法を破り、国際社会の協力体制を壊したとう事実に尽きるのです。これは、非難されこそすれ、まったく褒められたことではありません。

 北朝鮮の”善”とは、ひとえに自分たちに都合の良いことであって、”悪”とは、すなわち自分達に不利なことです。北朝鮮の価値基準は、常に自己中心的なのです。北朝鮮がこうした価値観の倒錯した国家であることを踏まえますと、日本国政府は、この国との交渉には、くれぐれも慎重であらねばならないと思うのです。