時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

皇室の中立性の維持を

 皇室についての議論と申しますと、皇室典範の改正問題に偏りがちです。しかしながら、何にもまして大切なことは、皇室の中立性を守ることではないか、と思うのです。

 皇室の危機とは、その皇統の継承のみに発するものではありません。国家と国民の統合の象徴とさる天皇の地位、あるいは、国家の危機は、皇室が、特定の政治集団や宗教集団に利用されたり、採り込まれたりすることによっても起きるのです。近年に至って、この懸念は杞憂ではなく、将来において皇室の中立性が危うくなる事態が起きているように見受けられます。宮内庁の職員のみならず、皇室のメンバーもまた、外務省、宗教団体、さらには、外戚や外国勢力などと繋がりをもっているという情報があるからです。つまり、一部の人々の”天皇”になる可能性があるのです。

 天皇は、古代より国家の神祇祭祀を司ることにより、超越的な立場に立って日本国の安寧を祈ってこられました。祭祀権者であるからこそ、天皇は、連綿と2000年の時を越えて国民の崇敬を集めてこられたのです。この天皇の本質を失っては、たとえ制度を維持したとしても、それは、魂のない抜け殻となってしまうことでしょう。今日、天皇の中立性の維持を、制度的に検討する時期に来ているのではないでしょうか。