時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

左翼思想が説得力を失った理由

 戦前戦後を通して、多くの知識人が共産主義社会主義に理想を求め、革命運動に身を投じることになりました。そうして、左翼こそが進歩的な思想であり、時代の先端をゆくものと主張したのです。

 しかしながら、現在に至って明らかになったことは、左翼の思想は人類の進歩ではない、ということです。歴史的に見ますと、社会・共産主義を採用した国家はほとんど消滅しましたし、現存する諸国もまた、解決しがたい大きな矛盾を抱えて右往左往しています。いくら左翼の知識人が説得しようとしても、誰もが、中国や北朝鮮といった共産主義国家に理想を求めることはできなくなったのです。

 さらに、論理的な側面からも左翼思想は、存立しえなくなってきました。19世紀の社会分析から導き出したイデオロギーが、現代という時代に適合するはずはなく、むしろ、イデオロギーと現実を一致させようとすればするほどに、退行せざるを得なくなるからです。これは、致命的な欠陥です。

 左翼の人々は、世の中を良くし、恵まれない人々を救おうとする善意からこの思想に共鳴したのでしょう。もし、今でも善意が残っているのであるならば、今度は、社会・共産主義体制にあって弾圧を受ける人々を救うためにこそ活動していただきたいと思うのです。