時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

国連至上主義の”恒久法”と国連憲章との不整合

 本日、民主党もインド洋での給油活動継続に対して柔軟な姿勢を見せ始めたとの報道があり、ようやく日本国を揺るがしたこの問題も峠を越えつつあるように見受けられます。しかしながら、自衛隊の海外派遣に関する議論は、これから本格化せざるを得ないのではないか、と思うのです。

 特に問題となるのは、国連至上主義です。憲法は国連の活動のみに自衛隊の派遣を認めているとする解釈には相当の無理があるようです。

 第一に、1946年に制定された日本国憲法には、国連に関する規定は存在していません。日本国が、国連に対して加盟申請したのは1952年であり、正式に加盟したのも1956年です。第二に、現在なお、国連憲章には旧枢軸国を対象とした敵国条項(第53条)が残っています。つまり、第二次世界大戦の対立構図を反映して、日本国は、国連にあってはむしろ”侵略行為”が警戒されたままとなっており、軍隊の派遣が期待されていたとは考えられないのです。第三に、国連憲章の第43条では、いわゆる”国連軍”を規定していますが、これは、現在にあっても実現していません。もし、国連決議さえあれば、如何なる場合でも自衛隊を派遣できるとなりますと、日本一国のみが、自国の軍隊を国連に提供(供出?)することになります。

 以上に述べましたように、国連至上主義に基づく民主党案には、主権的権限の国連への移譲の問題みならず、国連憲章との間に重大な不整合が見られるのです。国連至上主義に走る前に、国連という組織を徹底的に吟味してみる必要があると思うのです。