時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

憲法第9条は偽善

 今月15日、横田めぐみさんが北朝鮮に拉致された日から、30年という月日が経つことになりました。学校からの帰宅途中に忽然と姿を消して以来、今日に至るまで再びめぐみさんと会うことができないでおられるご両親、そうして、かの地で囚われの身となっているめぐみさんの悲しみを思いますと、心の痛む限りです。

 本来、自国民が他国に拉致されたり、人質となったりした場合には、国家は、特殊部隊を派遣するといった強硬な手段に訴えてでも、自国民を取り戻すものです。しかしながら、日本国の場合には、憲法第9条の制約があり、自衛隊を派遣するという選択肢を除外してきました(仮に自衛権の発動として可能であるとしても、論議は紛糾したことでしょう・・・)。もし、こうした制約がないとしたら、抑止力が働いて、北朝鮮とて、めぐみさんを含めて100名(未認定者を含めて)にも上る日本人を拉致するといった暴挙には及ばなかったかも知れません。拉致事件を起こしても痛くもかゆくもなのですから、憲法第9条は、北朝鮮の犯罪行為を増長させる要因の一つであったとも言えるのです。

 憲法第9条は、戦後の平和の象徴とされていますが、その陰で、国民を守るという国家の基本的な義務がないがしろにされたことを、どのように考えればよいのでしょうか。拉致被害者を救えるのは、国家をおいて他はないのです。このことを考えますと、無辜の国民を救うことさえできない憲法第9条は、どうしても偽善に思えてならないのです。