時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

豪州選挙に見る政権の持ち回り制

 豪州では、総選挙の結果、12年間続いた保守連合のハワード首相が政権から去り、労働党のラッド氏が新たな首相に就任することになりました。敗因なき敗北と言われるように、失政を理由ではなく、国民が長期政権に飽きたからとも言われています。つまり、政策や首相の選択ではなく、政権交代のための選挙であったことになります。

 政権が長期化しますと腐敗やマンネリズムが生じやすく、選挙による政権交代は、こうした事態を避けるための有効な手段です。しかしながら、はじめに政権交代ありき、ということになりますと、これもまた問題ではないか、と思うのです。と申しますのは、政権交代のみを目的としますと、結局、二大政党あるいは二大陣営による政権の”持ち回り制”に堕してしまうからです。この状態に陥りますと、政策についての活発な議論は起き難くなり、また、たとえ長期政権側の政策が優れていたとしても、政権交代が優先されてしまうことにもなるかもしれないのです。

 二大政党制に至った場合、政権の持ち回り制という欠点を自覚しませんと、政権交代自体が目的化してしまうかもしれません。選挙とは、国と国民の利益をよくよく吟味した上での政策の選択であるべきではないか、と思うのです。