時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

国民には国家を防衛する義務がある

 最近、宮崎県の東国原知事が、青少年教育の方法論を中心に徴兵制擁護論を展開し、話題となりました。この発言については謝罪が表明されているようですが、はたと立ち止まって考えてみますと、国民の防衛義務について、これまで、まっとうな議論がなされてこなかったように思うのです。

 しばしば国民の三大義務は、納税、教育、労働と言われてきました。確かに、これらの義務は、憲法上において明記されており(第30条、第26条、第27条)、明確な憲法上の裏付けを持っています。しかしながら、防衛の義務については憲法は何も語っておらず、刑法の外患誘致(刑法第81条)と外患援助(刑法第82条)によって刑罰の対象となるのみなのです(利敵行為については昭和22年に削除・・・)。

 一方、国家の自衛権と同様に(国際法上で認められている国家の当然の権利)、この義務は国民には”ない”と解釈することには無理があります。何故ならば、国家の存在理由の一つが、外部からの攻撃から自らを守ることであるからです。このため、ドイツやスイスなど、徴兵制を制定している国では軍事的役務に従事する義務を憲法に明記していますが、徴兵制のない国では、日本国と同様に国防の義務を憲法に明記しない国も多いのです。つまり、国民の防衛義務は当然なものとして捉えられているのです。

 絶対平和主義者や無防備都市宣言の議論を耳にするにつけ、何か、国民の中には、有事に際しても、国民には自国を守る義務などない、と考えている人々が多く存在しているように思えてなりません。徴兵制の議論は別としても、国民には、国家の一員として有事に際しては防衛に協力する義務があるはずなのです。これは、極論でも、軍国主義的な主張でもなんでもなく、ごくごく普通の国のあり様なのではないでしょか。