時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

日本国は色彩文化の伝統でセンス・アップを

 最近のテレビ番組を見てみますと、何と多く、原色が無造作に使われていることでしょうか。赤、青、緑、黄色、などなど、きつい色彩が否が応でも目に飛び込んできます。派手派手しい色彩に疲れを覚え、すぐにテレビを消してしまうことになるのですが、何時から、日本国のテレビ番組では、色使いが低俗化してしまったのでしょうか。

 古来、日本国では、色彩の微妙な違いを上手に使い分けてきました。例えば、同じ赤色でも、緋、唐紅、赤紅、真朱、小豆色、猩猩緋、珊瑚朱、紅樺などなど、様々な色合いがあり、そのひとつひとつを、それぞれの特徴に合わせて使いこなしてきました。そうして、色を組み合わせるときでも、細心の心遣いをもって、美しい調和を見出してきたのです。日本文化の誇りの一つとして、この色彩の文化を挙げることもできましょう。こうした伝統がありながら、現在のテレビ番組やCMに見られる色使いは、あまりに単純であり、あまりに見苦しいのです。

 文化が世界に向けての発信力を持つならば、日本国は、伝統に培われたこの繊細で洗練された色彩の文化こそ大事に育て、マス・メディアのみならず、様々な分野で生かしてゆくべきではないか、と思うのです。長い年月をかけて築き上げられた文化の中から生まれた、わずかな違いをも見分ける研ぎ澄まされた感覚は、必ずや、日本国のセンス・アップに貢献することになりましょう。