時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

世銀への増資が北朝鮮を利したら

 最近となって、世銀が日本国に対して増資を要請しているという新聞記事を多く目にするようになりました。この増資、実は、北朝鮮問題にも影響を与えると言うのです(本日付日経新聞夕刊)。

 それは、アメリカが北朝鮮に対してテロ支援国家指定を解除した場合、北朝鮮が、国際機関、つまり、世銀やADBを通して経済支援を受けることができるようになるかもしれないからです。北朝鮮が支援対象となるにはまだまだ幾つかのハードルがあるようですが、もし北朝鮮が融資対象国となることになれば、拉致問題解決のための圧力として、日本国が、北朝鮮に対して経済制裁を加えている意味がなくなってしまいます。いわば、横道ができてしまうことになるのです。

 そもそも、世銀などの国際機関が増資を行うこと自体が、どこまで必要なことなのか疑問な点も多く(利権化や相手国政府の腐敗の問題・・・)、民間の金融機関に任せた方が適切な場合もあります。また、国際機関を通した融資では、当該機関の決定に対する影響力が当然に薄まりますので、自国の政策方針に反する結果を招く場合もあります。世銀の増資に対しては、その結果を十分に見通した慎重な判断が必要なのではないか、と思うのです。