時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

AIIBによる北朝鮮融資は重大な結果を招く

 参加予定を表明した国が50各国を超えたAIIB。設立協定も作成されていないため、海のものとも、山のものとも分かりませんが、最悪の融資先は北朝鮮ではないかと思うのです。

 北朝鮮がAIIBへの参加を申請したところ、中国からにべもなく断られたことは、既に報じられておりますが、設立されたAIIBが、北朝鮮に融資を行う可能性は消えてはいません。中国は、いわば北朝鮮の庇護者の役割を果たしてきたのですから、AIIBにおいて中国が主導権を握っている限り、北朝鮮のインフラ・プロジェクトに融資する公算は決して低くはないのです。将来、南北統一に際して予測される莫大な財政負担をAIIBに肩代わりさせたい韓国も、メンバー国として対北融資案を支持することでしょう。しかも、世銀やADB等の既存の国際機関と比較して、労働条件、環境保全、政府の返済能力等において、融資の審査基準が大幅に緩和されるとしますと、北朝鮮でもハードルを越えることができるのです。しかしながら、北朝鮮が、核・ミサイル開発に関連して国連の経済制裁対象国となっていることを考えますと(イランは交渉が進展中…)、この融資は、国際社会において重大な事態を招きかねません。

 何故ならば、対北朝鮮融資は、国連の枠組みが崩壊することを意味するからです。国連安保理決議が空文化するのですから。このことは、国際経済秩序に留まらず、中国による戦後の国連体制に対する重大な挑戦となるのではないでしょうか。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。