時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

ちぐはぐな原油高対策と環境税構想

 昨今の急激な原油高を受けて、政府は、今月11日に灯油代の補助を柱とした原油高対策の基本方針をまとめました。その一方で、税の上乗せにより灯油やガソリン価格を人為的に上げることによって、消費量=温暖化ガス排出量を減らそうとする環境税構想もあります。後者は、東京都が国に先んじて導入を検討いていると言いますが、この両者、政策の方向性が逆を向いているのです。

 もし、温暖化対策を優先するならば、原油高は、自然にエネルギー消費量を減少させますので、上がるに任せてもよいはずです。環境にとりましては、原油高は望ましいのです。ところが、実際に原油高が進行しますと、国民生活や経済は、困ったことになります。寒冷地では、冬場を迎え、灯油は生活必需品となりますし、経済活動を支える流通にも、ガソリン価格の値上がりは痛手となります。そこで、政府は、補助金の支給という救済の手を打つことになります(本当は、補助金の支給よりも石油輸出国への働きかけや原油市場への投機マネーの流入を抑えた方が良いのですが・・・)。

 今回の政府の判断から分かることは、国民や経済にとってマイナスとなる政策は、なかなか採りにくいということです。つまり、将来における環境税の導入には、慎重にならざるを得ないのではないでしょうか。経済と環境との両立には、やはり、研究・技術開発を通したイノヴェーションが必要なように思うのです。