時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

自滅を薦める”総合取引所構想”

 取引市場の競争力強化を目的として、日本国でも、証券市場と商品市場などを融合させた”総合取引所”の設立が検討されると言います。しかしながら、商品市場への投機資金の流入ほど、市場経済にとりましてマイナスとなるものはないと思うのです。

 最近の急激な石油価格上昇の一因は、サブプライム・ローン問題から発生した金融不安から、証券市場からの資金の逃避が起こり、それが、石油市場になだれ込んだためと言われています。また、穀物市場についても、経済成長著しい中国やインドなどでの需要増加と代替エネルギーとしてのバイオ・エネルギーの増産の見込みが、先物取引などを通して穀物価格を押し上げたとの指摘があります。つまり、商品市場への投機的な資金の流入は、ストレートにエネルギー資源の価格上昇をもたらし、それは、連鎖的に、すべての商品の値上がりを招くことになるのです。もし、総合取引所が設立されますと、投資家は、即時的に投資先の切り替えができるようになりますので、当然に、商品市場への資金流入が加速されることになりましょう。

 商品市場への投資は投機行為であって、企業と消費者双方にとりまして迷惑な物価の上昇しかもたらさず、金融機関にとりましてもリスクの高い”ばば抜き”しか意味しません。物価上昇は経済活動の重荷となりますので、不況にさえ陥るかもしれないのです。このマイナス側面を考えますと、商品市場の壁は、むしろ高くして、投機資金の流入を防ぐべきではないか、と思うのです。総合取引所構想は、自滅的な行為の薦めに思えてならないのです。

 なお、証券市場と商品市場の違いについては、「似て非なる証券市場と商品市場 http://blog.goo.ne.jp/tbinterface/23cf978d0ba1ff06291209b4f6d71bc5/fa」をよろしければ、参考になさってくださいませ。