時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

環境技術はビジネス化を

 福田首相は、「アジア経済環境共同体構想」を打ち出し、日本国の環境技術をアジアの発展に生かす方針を示したと言います(本日日経朝刊)。この構想の具体的な姿は描かれていませんので、何とも言いようがないのですが、ここでは、日本国は、環境技術を無償提供すべきなのか、それとも、ビジネスとして取引をすべきなのか、という問題を考えてみたいと思います。

 伝統的なODA地球温暖化対策の文脈における環境技術の無償提供は、低開発国の経済発展に無条件に寄与し、相手国からも感謝されることになります。ただし、この方法ですと、技術開発をする側のインセンティヴは削がれてしまうという欠点があります。企業の環境技術開発への投資を増やすためには、開発成果が何らの利潤を生まない、という状況は望ましくはありません。汚染物質や温暖化ガスの排出量を実質的に減らすためには、企業の環境技術開発のインセンティヴが高く保たれていた方がよいのです。将来的には、環境技術の市場は、現在の5兆円から2020年には24兆円に拡大する見込みとのことですから(上記新聞記事)、環境技術のビジネス化は、日本国の経済にもプラスの効果をもたらすことになりましょう。もちろん、エネルギー効率が良く安全な技術の導入は、相手国の経済にもプラスに働きます。そうして、人々や環境のためになる技術開発が、企業をも育てるとなりますと、これは、経済と環境との調和の一モデルとも言えるかもしれません。

 最貧国や財政的な困難にある諸国に対しては、相当の配慮が必要となりましょうが、経済成長の過程にあり、あるいは、軍拡や宇宙開発などに資金をつぎ込んでいる国に対しましては、環境技術は、ビジネス化した方が、はるかにメリットは高いように思うのです。