時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

侮れない陰謀論

 歴史上の重大事件や現在進行形の政治事件を説明する時、陰謀論を持ち出しますと、とかく一笑に付されがちです。しかしながら、”陰謀なんて絶対に存在しない”と言いきれないことも、この世の哀しさでもあります。少なくとも、幽霊よりも、遙かに陰謀の存在を証明することは容易なのです。

 平和な状態に慣れ切り、かつ、情報局を持たない日本国では、スパイの存在や外国や国際組織のエージェンシーについて無頓着です。しかしながら、かの日米開戦でさえ、ソ連コミンテルンが暗躍したとする証言がありますし、冷戦時代にあっても、東方外交を積極的に展開した西ドイツのブラント首相の側近が、東側のスパイであったする資料も残されています。最近では、中国政府の日本国の要人に対する組織的な工作が、国民に広く知れ渡るところとなりました。こうした事実を考え合わせますと、むしろ、陰謀や謀略は実際にある、ということを頭の片隅に置きながら、物事を理解しなくてはならないのかもしれません。

 もちろん、陰謀論を持ち出さなくても説明できることはたくさんありますので、都合が悪くなるとすぐに”これは陰謀だ!”と叫ぶ態度も問題です。しかしながら、陰謀の可能性を100%排除する必要もまたないと思うのです。最近では、特定の国内集団が国民に対して陰謀を仕掛ける場合もありそうですので、用心するに越したことはないとは言えましょう。私達は、嘘と真を見極めなくてはならない、難しい時代に生きているのです。