時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

忘れられた”少年よ、大志を抱け”の精神

 NPOのアンケート調査によりますと、「日本を良くするために政府に期待する役割」という問いに対して、「富裕層や大企業の税金を重くし、貧困層や中小企業の税金を軽くする」および「社会的弱者に扶助を与える」という回答が4割を超えたと言います。これは、現在の若者は、政府に”所得移転機能”の強化を求めていることを現しているのですが、このことは同時に、国家衰退の兆候でもあると思うのです。

 ”少年よ、大志を抱け”という言葉は、冒険心と活力に富んだ青少年の心を、未来に向けて鼓舞する一節としてよく知られています。若者たちは、この言葉によって、自立精神を養い、志を持って何事かを成さんとする心構えを持ったのです。実際に、日本国の発展は、こうした若者たちの気概によって支えられてきたとも言えましょう。翻って現在の若者を見てみますと、自分自身で何かを成し遂げて行くよりも、政府に依存したいとい意識が見て取れるのです。これは、社会主義化傾向とも、あるいは、福祉国家化とも言えますが、高福祉高負担による産業の衰退は、既に、欧州各国では経験してきました。日本を良くするためには、まずは、国民のひとりひとりが、自らの力を発揮できる環境を整える方が、はるかに国家の活力を維持できるのではないか、と思うのです。

 弱者救済は、政府の当然の役割ですが、”富める者(他者)から採ればよい”というゼロ=サムの発想は、あまりに寂しいものですし、現在の若者の、何かアンニュイな無気力感を漂わせています。もう一度、”少年よ(もちろん、少女も!)、大志を抱け”と、大きな声で叫んでみたくなるのです。