時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

基礎年金の全額税方式の問題点

 基礎年金の全額税方式については、民主党経団連をはじめとして、自民党の麻生氏も消費税率10%を前提に賛成を表明したと言います。それでは、この全額税方式には、何らの問題や心配事もないのでしょうか。

 予測される問題点として、第一に、財源が、安定しているようで不安定という点が挙げられます。消費税による税収は、その時の景気および物価に連動しますので(賦課方式)、将来においても、一定の財源が確保できるかわからないのです。もし、経済成長が鈍化して財源が縮小した場合には、給付額を減らすか、消費税率をさらに上げるか、あるいは、別の財源を求めるしかなくなります。

 第二に、財源のみならず、給付面も不安定さがあります。それは、人口構成の影響を大きく受けるということです。現在、少子高齢化が進んでいますが、高齢者人口の増加に伴って、必要とされる財源も大きくなります(ただし、消費税方式の場合には、高齢者も負担することになるのですが・・・)。

 第三に、これまで保険料を納付してきた人々については、民主党案では、報酬比例部分に加算するとのことですが、実のことろ、莫大な予算がかかると言います。国民間に不公平が起きてはなりませんので、この問題もクリアしなくてはなりません。

 第四に、民主党案では、高額所得者を給付対象からはずしましたが、給付対象や給付条件をめぐっても、まだまだ議論がありそうです。所得制限、加入期間、外国人の扱いなど、これらをどのような基準を設けるかによって、年金制度の財源や運用は大きく違ってきます。

 第五に、これは言い尽くされたことかもしれませんが、消費税のアップによる景気の後退が、むしろ、年金の財源を減少させてしまうという心配です。企業の社会保障費の負担は軽減するものの、購買力が低下して企業収益が低下することになれば、元も子もありません。

 最後に述べるとすれば、国民の就業インセンティヴを低下させることになるのではないか、ということです。ニートの発生が社会問題となっていますが、働かなくても年金がもらえるとなりますと、余計に就業意欲が低下してしまうかもしれないのです。
 
 以上に心配ごとを書き連ねましたが、多くの国民が納得できるように、是非とも、活発な議論を展開していただきたいと思うのです。