時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

北朝鮮と交渉すると前近代国家になる?

 新聞報道によりますと、平成14年9月の日朝交渉際しての外務省の記録文章が、二回分にわたって欠落していると言います。しかも、この欠落部分は、拉致問題や経済協力問題といった、特に重要な内容が話し合われた日のもののようなのです(本日付産経新聞朝刊)。

 外交に関わる文章を記録として残すことは、近代政府の基本的な仕事のひとつです。記録がありませんと、政策の継続性に支障をきたすことに加えて、後の人々が、交渉過程を検証することもできません。最悪の場合には、相手国の主張との間に重大な隔たりが生じた場合に、政府は、それを、否定することも肯定することもできなくなってしまうのです。特に、相手国が北朝鮮であることを考えますと、記録という証拠がないのは、大きな痛手になりかねず、禍の種を後世に残したことになりましょう。

 北朝鮮という国家と交渉すると、相手国まで、その独裁体制のメンタリティーに引きずられて、前近代国家に引き戻されてしまうようです。日本国は、北朝鮮に現代国家のルールを理解させる意気込みをもって、交渉には臨むべきなのかもしれません。現代国家として到底考えられないようなお粗末な事態が発生することに、危惧を抱かざるを得ないのです。