時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

独裁者の面子は国民を不幸にする

 米紙の報道によりますと、世界最悪の独裁者に、北朝鮮金正日が選ばれたと言います。北朝鮮では、今日でも、時代遅れな特異な思想による全体主義体制が続いており、独裁者による国民弾圧は誰の目にも明らかです。それにもかかわらず、何故、かの国は、消滅しないのでしょうか。

 その理由の一つとして、相手の”面子”を立てるというアジア的な儀礼が災いしているとも考えられます。しばしば、北朝鮮擁護論として、北朝鮮は、面子を重んじる国であるから、それを尊重しなくてはならない、という主張が、したり顔で語られることがあります。しかしながら、誰もが非道徳的であって、人道に反していると判断せざるを得ない行為に対しまして、面子論を持ち出しますと、それは、独裁者の悪行を見逃すことの奨励になってしまうと思うのです。何故なら、”あなたの行為は間違っている”、と指摘することは、面子を潰すことになるのですから。

 独裁者の面子を尊重することが、多くの国民を不幸の淵に引きずり込むことになるならば、面子論は、有害な考え方とさえなります。時には、人倫に鑑みて、独裁者の面子を潰さなくてはならない場合もあるのではないでしょうか。