時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

裁判員は義務か、権力の行使か

 裁判制度をめぐっては、現代の”徴兵制”に喩えられるように、国民の義務の側面が強調される傾向にあります。その反面、裁判権とは、そもそも、国家権力の一つであることに思い至りますと、抽選で選ばれた人が、この権限を行使することは、是か非か、という問題が、十分には議論されていないように思うのです。

 徴兵制の場合には、兵役に就いた国民は、政府の命令に従って行動しなければなりませんので、国家権力を行使していることにはなりません。一方、裁判員は、自らの意思に基づく判断で、司法権を行使するのですから、国家権力の行使という側面がはるかに強いのです。分権的な中世の封建制度にあっては、領主が領民に対して持つ権限でもありました。

 立法権を司る議員や、執行権を行使する内閣のメンバーを、民主化を理由として抽選で選ぼうという議論はありません。また、百歩譲って、裁判員を司法官という官職と見なすとしても、公務員を抽選で選ぶという制度も論外と言われそうです。それにも拘わらず、裁判権に限って、裁判員制度という抽選制が導入されるのですから、政府は、国民に対して十分な説明を行う説明責任があると思うのです。

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