時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

ひとりっ子政策は中国人の心を変えたのか

 四川大地震の被害現場の映像の中で、特に見る者の涙を誘ったのは、大切に育ててきた子供を失っった悲しみに泣きくれる親御さんたちの姿でした。中国人の親子関係については、かつては子沢山であったこともあってか、親孝行の道徳は強調されることはあっても、親の子に対する慈しみは希薄であると指摘されてきました。しかしながら、今回の地震情報に接する限り、親の嘆きと悲しみには、嘘偽りがないように思えるのです。

 おそらく、長期にわたって続けられてきたひとりっ子政策によって、二親の愛情が、一人の子供に注がれるようになったことが、中国人の意識に緩やかな変化を与えていったのかもしれません。掛け替えのないわが子に対する親の愛情は、生命に対する意識をも人命尊重の方向へと変えていったように思うのです。そうであるからこそ、親たちは、子供たちを死に至らしめた当局の”手抜き工事”に怒り、被害者救出に消極的な政府に対して怒りを噴出することになったのではないでしょうか。

 ひとりっ子政策とは、毛沢東による人口増加政策の結果に起きた急激な人口爆発への対処法として導入された人口抑制策であり、それ自体は、国民の自由を束縛するものでもあります。しかしながら、その反面、この人権抑圧とも言える政策が、中国人の心に人権尊重の意識をもたらしたとしますと、ひとりっ子政策の功罪を思わざるを得ないのです。

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