時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

裁判員制度―国民の選択なき民主主義

 裁判員制度の導入には、司法への国民の参加、しかも、無作為の抽選制こそが民主的で先進的であるとする思い込みがあるようです。ところで、抽選制とは、言われるほど、合理的であり、また、民主的な制度なのでしょうか。

 古代ギリシャアテネでは、”抽選制の大幅な導入によって民主的な制度を発展させたことで知られています。そうしてまた、この抽選制が、適任者を選べず、アテネに衰退を齎したことも確かなのです。アテネの場合には、抽選は神意の表れ、とする共通認識の下で行われていましたが、現代という時代にあっては、抽選制を正当化する根拠は、そう多くはありません。せめて、籤に当たる確率が平等であるに過ぎないのであって、合理的な根拠に欠けているのです。司法権力を、”運任せ”で配分してしまうわけですから、そこには、国民の公務員を選ぶという意志さえ介在していません。つまり、裁判員制度は、国民の選択なき民主主義なのです。

 現代にあっては、抽選で選ばれた裁判員を、”神から選ばれた者”と見なす人もなく、偶然性への依拠は、裁判員制度の信頼性に疑問を投げかけています。裁判に一般常識を反映させるには、せめて陪審制に変更するなど、別の方法を考案した方が良いように思うのです。

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