時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

国籍法改正案―婚外子問題と外国人差別の混乱

 国籍法改正案の根拠となった最高裁判所の判決は、嫡出子と婚外子との平等化を理由として、違憲の判断を示しました。しかしながら、どうやら、この判決には、婚外子差別と外国人差別との混乱があるようなのです。

1. そもそも、日本国の民法では、婚外子は、母の戸籍に入るとされております(民法第790条、戸籍法52条)。国籍法の規定も、これらの規定に倣い、父と母とで国籍の異なる婚外子は、母方の国籍および戸籍に入ると定めたのでしょう。もし、6月の最高裁判所の判決のように、嫡出子と婚外子との間の権利の不平等が問われるならば、この民法の条文も改正しなければならないことになります。

2.それでは、国籍法は、外国人を差別しているのでしょうか。国籍法という法律は、国民を定めるものですので、それ自体が、国民と外国人を区別しています。しかしながら、この区別は、どの国でも行う相互的なものであって、必ずしも道義的な批判の対象となる差別とは言えません。本件を見ましても、母方の国籍は付与されておりますので、子が無国籍になるなど、不当に権利が侵害されているわけでもありません。日本国のルールに従って、母方の国籍となったのです(民法でも、認知だけでは父の籍に入れない・・・)。もし、母方の国籍では不満と言うのであれば、むしろ訴える側の方が、自ら、国籍差別を行っていることになりましょう。

 このように考えますと、国籍法は、嫡出子と婚外子との間に権利の差を設けてはいますが、外国人差別を行っているわけではありません。そうして、婚外子の権利の問題は民法上の問題であり、かつこの権利の差は、国民の多くが受け入れてきた制度でもあるのです。現時点で、国籍法を改正するのは時期尚早であり、まだまだ国民的な議論を要する問題が山積していると思うのです。

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