時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

国籍法改正案賛成論への反論

 国籍法改正案に対する賛成論は、法の下の平等=嫡出子と婚外子の平等=日本人と外国人の平等という構図に依拠しています。全体からこの部分だけを切り取りますと、本法案は、”改正”と見えるかもしれません。しかしながら、一面だけ、あるいは、一部の立場の人々の利益のみを基準として一般的なルールを作ることには危険があります。それではどのような面で、この法案は、”改悪”とみなされているのでしょうか。

1.最高裁違憲判決に問題があること。
 改正賛成論者は、最高裁判所違憲判決を絶対視していますが、本違憲判決は、一夫一婦制を基本とする限り、嫡出子と婚外子との差が生じてしまう、という二律背反性を無視しています。一夫一婦制の維持は、国民が決めることであって、司法が決めることではなく、最高裁判所は、この件について、越権行為を行ったことになります。

2.国民の声を反映していないこと。
 国籍法法案について国民の間から不信の声が上がっているのは、国民全てに関係する重要法案でありながら、マスメディアなどが積極的に取り上げていないからです。このため、国民は、何らかの圧力がかかっているのではないか、と怪しんでいるのです。情報を隠した形でこのまま法案を通しますと、国民の政治不信は、さらに深まることになりましょう。

3.完全な平等化は不可能なこと。
 本法案は、一見、平等を推し進めたように見えます。しかしながら、賛成論者の唱える平等も、一部の救済であっても、完全な平等とは言えません。何故ならば、新たに”認知された子”と”認知されなかった子”の間の不平等は残りますし、そもそも、子は親を選ぶことはできませんので、出生による不平等は誰もが”平等”に持っている”不平等”なのです。

4.犯罪に利用されること。
  法律が、人に権利や義務を与える性質のものである場合、義務より権利の方が大きければ大きいほど、不正や犯罪への誘因となります。本法案は、認知をする者に対する義務の規定がありませんので、当然に、認知ビジネスや人身売買など、組織犯罪に利用される可能性が高くなります。

5.政治的に利用されること。
 もし、外国の政府や政党が、日本国の国籍法を自国や自党の利益のために利用しようとした場合、現行の制度では、これを防ぐ手段がありません。国籍は、民法上の私的な問題に止まらず、国民としての政治的権利の付与も意味しますので、内政干渉や内部破壊、あるいは、政治利用などの危険があります。

6.国家の纏まりの崩壊
 本法案には、親子関係を確認するDNA鑑定すらなく、また、認知を意思主義に基づくとしますと、日本語ができず、日本の歴史、伝統、習慣も知らず、自由や民主主義を基調とした国家の体制や国民の権利・義務も学んでいない人々が、無制限に日本人となることになります。こうした状況になりますと、日本国の国としての纏まりは、崩壊して行くことになりましょう。

 以上に述べたように、本法案には、付随する様々な問題点があります。賛成論者は、こうした派生的な問題ついて、有効な解決策や防止策を示せない限り、国民を納得させることは難しいのではないか、と思うのです。少なくとも、本法案の本国会での成立は、議論が不十分であり、見送るべきと思うのです。

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