時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

国籍法問題―認知意思主義と「赤ちゃんポスト」

 国政法改正案を急いではいけない理由には、国籍法の認知と民法上の認知との違いが整理されていない点を挙げることができます。そもそも、私法上の”認知”は個人の問題ですが、公法上の”認知”とは、国民を選ぶことですので、要件が同一なはずはないのです。しかも、民法上の認知でさえ、まだまだ意思主義を原則とすることには疑問があるのです。

 民法上の意思主義は、最高裁判所判例によって血統主義から意思主義へと変更されたと主張されていますが、この変更自体、最高裁判所の越権ではないかと思われます。何故ならば、民法では、養子の規定などが置かれており、どう読みましても、自然的な血縁を以て親子を捉えていると理解せざるを得ないからです。ですから、最高裁判所は、この民法の原則を恣意的に変えたことになり、”法の番人”どころか、”法の改竄者”であったことになります。親子関係の認定を、親側の意思に求めるとしますと、もう一つ、忌々しき問題が発生します。それは、親が子を否認するという事態です。これは、「赤ちゃんポスト」のケースです。つまり、個人の意志によって、法律的な親子関係を発生させることができるならば、その反対に、親子関係の解消も、個人の意思に依拠してできることになってしまうのです。もし、これを認めますと、親子関係は、極めて流動化することなることになりましょう。

 このように考えますと、国籍法を改正するに際しては、公法と私法の両面における認知の見直しから始めなくてはならないことになります。国籍法における認知に意思主義の原則を主張する人々は、この問題について、何と答えるのでしょうか。

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