時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

TPPのISDS条項より怖い最高裁判所の違憲審査

  TPPをめぐっては、民間企業に出訴権を認めたISDS条項が、一外国企業の訴えによって国内法の改正が迫られる内政干渉のルートとして懸念されてきました。この懸念については、解決機関の選択肢を広げるといった方法で緩和が図られましたが、国内の最高裁判所違憲審査にも、この問題と共通する問題点があります。

 どのような点が共通しているかと申しますと、一個人の訴えによって、法律そのものが改変されてしまう点です。先の嫡出子相続差別訴訟にも見られたように、民放改正のきっかけは、違憲立法審査権を付与されている最高裁判所の判決によるものです。つまり、個人の極めて私的な事情に基づく訴えが、全国民に関わる法律の改正を強要する結果をもたらすのです。特に民法家族法は、杓子定規に平等原則を徹底することができない分野です。親子、兄弟、夫婦等は、全て家族内のポジションが違う関係ですし、その国の国民の伝統や慣習を強く引き継いでもいます。仮に、変更するならば、国民的な議論の下で合意を形成すべきであり、一個人の訴訟の行方によって変更が決定されるべきものでもありません。否、民主主義の原則からすれば、民意を無視した”司法独裁”ともなりかねないのです。

 年内にも、夫婦同姓、並びに、離婚後半年以内の再婚禁止の規定について、最高裁判所の判断が示されるそうですが、それ以前の問題として、民法改正のあり方を問うべきではないでしょうか。実のところ、最高裁判所違憲審査は、ISDS条項以上に国民にとりましては、脅威になり得るのではないかと思うのです。

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