時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

道州制の導入は国家分裂への道か?

 ここ数年来、政界から、道州制の導入により、地方主権の政治の確立を、といったスローガンが聞えてくるようになりました。しかしながら、道州制の導入は、方法を誤ると、国家分裂を招くかもしれないと思うのです。

 そもそも、アメリカやドイツといった連邦制は、既に存在している州が寄り集まって、一つの連邦国家をつくるというプロセスを経ております。後から人工的に区割りをしたわけではなく、州や地方の政府は、本源的な自治権を有しているのです。一方、日本国で唱えられている道州制は、必ずしも歴史的な区分に沿うものではなく(○○国や藩・・・)、自然発生的な地域としての纏まりがあるわけでもありません。しかも、明治の世を迎えるにあたって、当時の人々が、国家の統合に苦心したことを考えますと、安易に道州制を進めることが、日本国の弱体化を招く危険すらあるのです。

 日本国の強みの一つとして、単一国家であることが指摘されてきましたが、わざわざ国家を分割するような方向が望ましいのか疑問なところです。道州制を導入しなくとも、従来の都道府県の枠組みを残したまま、中央と地方との間で権限配分を見直す、あるいは、政策の一部だけをより大きな行政区に纏める、という方法もあります。道州制の導入については、より慎重に議論すべきと思うのです。

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