時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

名誉棄損罪の判決はダブル・スタンダード?

 最近、インターネットなどをめぐり、名誉棄損罪が注目を集めるようになりました。ところで、この名誉棄損罪については、裁判所の示す判断がダブル・スタンダードのように思えるのです。

 例えば、南京虐殺事件や従軍慰安婦問題については、中国や韓国などの周辺諸国は、これを戦前の日本国政府が組織的に行った”事実”として、大々的に国際社会で宣伝しております。また、周辺諸国のみならず、日本国政府もまた、村山談話河野談話などによって、自らそれを認めるような行為を行っております。もしこれが、事実に基づかないとしますと、これは、日本国に対する名誉棄損に当たるはずです。しかしながら、以前に示された、大江健三郎氏の裁判では、裁判所は、「百人切り」や「集団自決の軍関与」については、高裁は、”真実性の証明があるとはいえない”としながらも、”隊長の命令説が通説であった”ことを理由として、原告側の訴えを退けました。

 一方、故永田議員が名誉棄損罪で訴えられた創価学会の住民票移動事件については、千葉地裁は、”事実ではない”と断定して、名誉棄損罪を認めています。この場合には、誰もが信じるに足る広く知られた噂を根拠として発言したにも拘わらず、名誉棄損罪は成立しているのです。

 現在、テレビの報道、新聞や雑誌の記事、インターネットのブログ記事、流布されている噂など、国民の情報源も多様化しており、迂闊にそれを信じて発言しますと、名誉棄損罪に訴えられるとも限りません。しかも、信じた情報が、真実であるか否かによって、判決が180度変わることに加えて、裁判所の態度も揺れているとしますと、名誉棄損罪に対する国民の不安は募るばかりです。名誉棄損罪については、根本的な議論を要するようにも思えるのです。

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