時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

無期懲役判決が後押しする裁判員制度?

 昨日、前代未聞の残酷な犯罪として報道された”ばらばら殺人事件”の判決が、東京地裁において言い渡されました。求刑は死刑でしたが、大方の予想に反して無期懲役というものでした。

 被告自身も死刑を望んでおり、伝えられる行為には目を覆うばかりの残虐さがありましたので、誰もが、当然に死刑判決を受けるものと予想していたことでしょう。しかしながら、裁判官は、殺害行為自体は”極めて残虐”とは言えず、計画性も認められなかったことを理由として、より軽い刑としたのです。被害者の尊厳を無視した犯人の行動は猟奇的であり、また、衝動的な殺人を計画的殺人よりも刑を軽くするとしますと、無差別殺人や、行きずりの殺人に対する歯止めがかからないという非難もあるようです(産経新聞本月19日付朝刊)。

 こうした国民の一般常識や道徳観念から大きく外れた判決が言い渡されたことは、結果として、裁判員制度を後押しすることになったように思うのです。何故ならば、裁判員制度導入の理由として挙げられたのは、常識から外れたり、歪んでしまっている裁判官の感覚を是正するというものであったのですから。法廷では、裁判員制度の導入を意識して、プレゼンテーションが重視されたそうですが、一般的な感覚から外れた判決を出すことで、国民が、裁判員制度の必要性を強く感じるとなりますと、裁判員制度に反対してまいりました私としましては、何とも複雑な気持ちになるのです。

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