時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

”家庭の太陽光発電”買い取り構想は考えもの

 不況下での新たな成長分野として環境分野が注目されており、政府も、太陽電池設備を購入した一般家庭から、余剰の電力を高値で買い取る仕組みを検討していると言います。しかしながら、この制度には、充分に考慮すべき難点があると思うのです。

 第一に、太陽発電設備の普及が進めば進むほど、電力料金が高くなるという欠点があります。しかも、電力料金の値上がりの負担は、太陽電池を持てない家庭に集中します。太陽電池装置は、一台230万円ほどしますので、購入できない家庭とは、所得が低い家庭か、あるいは、集合住宅に居住している家庭ということになります。この問題の解決策としては、余剰のみならず、全電力を買い取るという案もあるそうですが(日経新聞本日付朝刊)、この方法でも、電力料金の値上がりは避けられません。全体としての発電量が増えたにも拘わらず、価格が上がる現象は、経済合理性には反しているのです。

 第二に、この制度は、電力会社にとりましては、経営の圧迫になる可能性があります。電力会社は買い取りを義務付けられますので、電力の買取単価が上昇する一方で、家庭の自家発電の増加により、電力の販売量は減少するからです。

 第三として、一般の企業にとっても、電力料金の値上がりは必要経費の上昇を意味しますので、マイナス要因となります。不景気にあって、コスト高を招く政策も考えものです。

 もし、太陽光発電設備の普及を図るならば、価格の安さを追求すべきであり、電力料金の値上がりを招き、負担の不公平が生じる方法は、適切ではないと思うのです。政府が支援をするならば、低価格を実現するための技術開発の側面において後押しをすべきなのではないでしょうか。

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