時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

公立中高一貫校論争―入試の工夫で解決?

 学費の高い私立校の方が大学受験に有利となる状況が定着し、このままでは、所得の低い世帯の子弟が高いレベルの教育を受ける機会が失われるという危機感から、公立でも中高一貫校が設立されるようになりました。この措置については、公立学校にも裕福な家庭の子弟しか入学できなくなるとする反対の声もあるようです。この論争の背景には、幾つかの問題点があるようなのです。

(1)ゆとり教育による弊害

 ゆとり教育が導入される以前には、公立の小中学校の授業レベルでも大学受験は可能であり、塾通いをしなくても、大学に進学することができました。しかしながら、現在では、大学の入試をパスするには学校の授業のみでは不十分であり、特に有名大学を狙うとしますと、塾に通わざるを得なくなりました。ここに、世帯間の所得水準の違いが、進学問題と直結してしまう要因があります。

(2)学校間格差の否定

 文部科学省をはじめ、日教組もまた、ゆとり教育と同時に、学校間の格差をなくすために平準化政策をとってきました。一見、平等そうに見えるのですが、実際には、能力に恵まれていながら家計に余裕がなく、公立に進学した子供達が、十分に才能を伸ばす機会を失うことになりました。その間隙を縫うように、私立校の優位が確立してしまったと言えます。

(3)教育の受験テクニック化

 さらに、塾における教育が、入試向けの受験テクニック化していることも問題点として挙げることができます。塾通いの有無が、受験テクニックの差として現れますと、明らかに塾に通った方が入試には有利となります。

 いたずらに公立の中高一貫校に反対しますと、結局、勉学への意欲がありながら貧しさ故に充分な教育を受けられない子供達を取り残してしまうことになります。そこで、公立学校の入学試験では、テクニックではなく、基礎知識を問うたり、知能テストとは言わないまでも、思考力や知力を測るようなテストを実施してはどうかと思うのです。このような方法であるならば、家庭の所得レベルが試験の結果に影響を与えないのではないでしょうか。

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