時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

雇用の確保vs.最低賃金上げ

 民主党は、最低賃金を平均1000円に上げることを選挙公約としてマニフェストに記載するそうです。しかしながら、この政策には、いくつかの問題点がありそうなのです。

(1)雇用の海外流出

 現在の最低賃金は、全国平均で703円(2008年)ということですので、もし、この政策が実現すれば、大幅なアップと言うことになります。しかしながら、このアップは、企業の人件費の上昇を意味しますので、現在が、製造拠点を容易に外国に移転することができる時代であることを考えますと、雇用の海外流出を加速させることになるかもしれません。

(2)企業倒産の不安
 
 昨年の金融危機以来、景気は低迷を続けており、企業の中にはワークシェアリングといった雇用調整を行っているケースも見られます。この時期にあって最低賃金を上げますと、中小の企業ではさらに経営が悪化し、解雇や倒産といった事態が相次ぐことも予測されます。また、企業は、新卒の採用にも消極的にならざるをえなくなります。

(3)増税
 
 中業企業の経営の悪化については、民主党は財政補助で対応するそうですが、これが、増税に跳ね返るとしますと、国民の生活を守るどころか、家計がさらに苦しくなります。

(4)物価の上昇

 さらにもう一点上げるとしますと、賃金の上昇分を製品価格に上乗せしますと商品価格が上昇し、物価高が家計を襲うかもしれません。

 硬直化した賃金制度によって国際競争力が低下し、失業率が上昇した事例は海外にもあり、最低賃金を上げるという方法が、国民生活の安定化に寄与するのかどうかは、疑問なところです。雇用が減少すれば元も子もなく、目的とは反対に国民生活の不安定化を招く可能性もあることも、忘れてはならないと思うのです。

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