時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

グローバル化を否定した東アジア共同体とは?

 民主党鳩山代表は、グローバル化を否定した上で、政権発足後の対外政策として積極的に東アジア共同体の建設に取り組むと伝えられております。鳩山氏代表が、アジアの市場統合ではなく、通貨統合を強調する理由は、アジアの現状を見ますと、必ずしも地域の市場統合を推し進める根拠があるわけではないからと思われるのです。

 EUと比較してみますと、1993年に誕生した欧州市場は、1980年代以降に急激に進展した市場のグローバル化と産業のハイテク化に直面した欧州諸国が、サバイバルをかけて取り組んだ大プロジェクトでした。当時、ヨーロッパの諸国は、”欧州硬化症”と呼ばれた深刻な経済停滞に苦しんでおり、それは、高福祉高負担の構造の悪循環がもたらした経済の病でした。国際競争力の低下と高度先端技術分野の遅れは、欧州に”西洋の没落”の危機をもたらしたのです。規模の経済の実現と企業家精神の蘇りをかけて市場統合に乗り出したわけですから、EC加盟各国では、様々な規制緩和や自由化の措置がECという”外圧”の下で行われ、経済の効率化と合理化が受け入れたのです。このことから、欧州の地域統合とは、鳩山代表の否定したグローバル化こそが、その原動力となっていた言うことができます

 EUとは異なり、輸出主導型の国によって構成されることが予測されるアジア諸国は、既に競争力を備えていますので、結束して規模を拡大する必要性はそれほど高くはありません。また、市場統合(財、金融、サービス、労働市場の開放・・・)が実現しますと、加盟各国は、圧倒的な中国のコスト競争力に晒されますし、雇用不安も発生しそうです。その一方で、経済格差がある中で通貨統合を行っても、同一製品同一価格を維持することも難しく、企業は壊滅的な影響を受けることにもなりかねません。このように考えますと、安全保障上のリスクもさることながら、東アジア共同体構想は根本的に見直し、アジア政策は、別のアプローチを考えた方が良いように思うのです。

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