時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

中国の市場経済化が万国の労働者を苦境に?

 民主党政権では、労働政策として、最低賃金の引き上げ、製造業への派遣禁止、再就職支援・・・など、さまざまな政策を総動員しています。しかしながら、日本国が抱えている雇用問題の根本原因は、人件費を武器とした中国の急激な経済発展にあることを考えますと、これらの政策は、常に、雇用か、賃金かの二者択一になりそうなのです。

 共産主義のスローガンには、確か、”万国の労働者よ、団結せよ”というものがあったはずです。世界の労働者は、国境を越えて、立場と利益を共にしていると。しかしながら、共産主義国家が市場経済化を選び、一国内部での統制経済を放棄して国際経済に参入するようになりますと、このスローガンは、消えてなくなります。何故ならば、統制経済で疲弊した国の安価な労働力は、労働市場において、圧倒的な競争力を持つからです。つまり、先進諸国をはじめとした他の諸国の労働者は、一気に、競争力を失ってゆくのです。雇用と所得は一体化していますので、雇用の喪失は、国民所得や購買力の低下に他なりません。また、競争力の喪失は、労働市場のみならず、製品市場にも及びます。安価な労働力で生産された外国製品は、価格破壊として自国製品に襲いかかるのです。

 もし、廉価な人件費に対抗して、自国の人的な資源の国際競争力を高めようとするならば、量から質への転換を図り、教育レベルを上げ、高い能力や技能をもつ人材を育てる必要がありますし、製品の競争力を上げるためには、不断の企業による研究・技術開発を要します。政府は、小手先の政策では景気回復はできませんので、日本国を取り巻く状況を直視し、長期的な視点に立って競争力の強化政策を後押しすべきと思うのです。

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