時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

国債増発が日本の企業を変えた?

 赤字国債の発行に伴うマイナス面ついては、これまで、各方面から指摘がありますが、日本企業の経営の在り方にも、若干の影響を与えたのではないかと思うのです。これは、あくまでも仮説ですが・・・。

 政府が国債を大量に発行しますと、それは、金融機関あるいは国民が引き受けることになります。日本国の場合には、国債の引き受けは、大部分は国内の邦銀が担っていますので、国民が個人向け国債を購入しなくとも、預金の多くが、金融機関を介して国債に化けていることになります。このことは、邦銀を始めとした日本国の金融機関の民間企業への貸し出しや株式・証券投資に向けられる資金が細ることを意味しますので、民間の資金繰りは苦しくなると考えられるのです。それでは、この現象が、どのように日本国の企業に影響を与えたかと申しますと、国内で必要な資金を調達できなくなった企業は、外国の金融機関や投資家に頼らざるを得なくなります。研究・技術開発や設備投資に多額の資金を要する企業ほど、この傾向は強くなります。この結果、株主の構成や取引先銀行が変わりますので、企業の経営方針もまた、長期的な成長を目指す家族主義的な日本型経営から、短期的な利益の最大化を追求する欧米型経営へと変化するのです。後者の場合には、常に株主配当率を高めねばならず、不況になれば、真っ先にリストラということになります。

 成果主義は必ずしも悪いとは言えませんし、個人の能力を引き出す経営は、何れの国でも企業の重要課題です。また、日本企業が世界中の金融機関や投資家から高い評価を受けることも、望ましいことです。しかしながらその一方で、国債を増発し、政府支出を増やせば、国民の生活が安定する、という単純な見方にも組みできないのです。もしかしますと、政府の国債依存が、雇用の不安定化の一因となっているかもしれないのですから。

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