時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

政党は宮内庁に介入できないのでは?

 宮内庁法の第一条に、「内閣府に、内閣総理大臣の管理に属する機関として、宮内庁を置く」とあることから、先の天皇陛下と中国の習副主席との会談は、政治利用ではないとの主張があります。また、民主党小沢幹事長は、ルールを曲げたことに対する羽毛田宮内庁長官の批判に対して、宮内庁長官を辞職してから意見するように、とも述べたと伝わります。しかしながら、この会見の経緯を考えますと、以下の理由から、少なくとも、政党には、宮内庁に介入する権限はないと思うのです。

(1)宮内庁内閣総理大臣に属する
 宮内庁法では、宮内庁は、内閣総理大臣の管理に属するとあり、議会や政党の管理に属するとは規定していません。総理ではなく、民主党の小沢氏が、政党の幹事長の立場から宮内庁長官の辞任を求めるのは、行き過ぎということになります。

(2)会見を強行した理由
 ルールを曲げての会見の実現は、小沢幹事長が率いた訪中団の返礼と指摘されています。内閣どころか、いわば政党の幹事長の都合が優先されたことになりますので、この点においても、皇室の政治利用(政党または政治家利用?)としての問題があります。

(3)会見は国事行為?
 天皇陛下と相手国政府要人との会見は、憲法第7条に定める国事行為ではなく、内閣の助言と承認が必要はないことになります。もちろん、政府要人との会見の位置づけは、今後、議論しなければならないことなのかもしれませんが、少なくとも現時点では”政治主導”が許されるのか、疑問なところです。

 以上の点からしますと、小沢幹事長宮内庁長官に対する非難には問題があります。また、憲法第1条では、”天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴”とされていますので、政府は、この中立的な立場を損ねる行為を強要するこはできないのではないかと思うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。
<A HREF="https://blog.with2.net/link.php?626231">人気ブログランキングへ</A>