時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

”政治主導”という名の政党による官僚支配

 中華人民共和国憲法前文には、”・・・人民は、・・・官僚主義を覆し・・・”というくだりがあります。典型的な官僚主義の国にもかかわらず、こうした表現があることは奇異に映りますが、この一文から、中国の一党独裁体制は、共産党が官僚組織を乗っ取ることで成立したことが分かります。

 民主党政権もまた、官僚主義の打倒を訴えて、政治主導の名の下で行政改革に行う方針のようです。改革案によりますと、重要ポストの官僚の人事権は、政府の手に移ることになるようですが、この方針、どうやら中国式の党支配の強化なのではないかと思うのです。我が国の歴史を振り返ってみますと、官僚組織と国民の利益とが必ずしも相反したわけではなく、戦後にあっても、高度成長時代を牽引したのは通産省であったとする有力な説もあります。外交など、政治問題について官僚が決定権を行使することには問題はありますし、官僚のモラル低下も問題ですが、その一方で、政党が、完全に官僚組織を手中に収めてよいというわけではないと思うのです。官僚組織は、党のためにあるのではなく、国民のために存在しているからです。むしろ、小沢氏の問題で明らかとなったように、政党が国益に反する行動をとることもあるのですから、相互の自立性を尊重し、適度なチェック・アンド・バランスを働かせる方が、現代という時代には相応しい制度設計なのではないかと考えられるのです。

 小沢氏の権力装置の一つが、あらゆる組織の人事権の掌握にあったことを考えますと、過度な権力の集中は、独裁体制を生みだすことになります。小沢氏がこれを狙っているとしますと、日本国の将来は危ういと思うのです。

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