時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

ソフトバンクの再生エネとアジア・グリッド構想の矛盾

 菅前首相が辞任条件としたために、再生エネ法が見切り発車されることになりましたが、この法案の根拠の一つとして、エネルギー自給率を高めることが挙げられていたと記憶しております。ところが、昨日、ソフトバンクの孫氏が、アジア・グリッド構想を打ち上げたことで、再生エネ法との間に重大な不整合が生じることになりました。

 アジア・グリッド構想とは、ロシア、中国、韓国、モンゴル、チベットを結ぶ国際的な電力供給網を構築し、アジア共同体の基礎に据えようというものです。ロシアも加わりますので、アジア共同体という表現が適切であるのか疑問なところですが、多国間で電力を融通しあう仕組み、あるいは、広域的な電力の自由市場の創設ということになります。一見、平和をも引き合いに出された理想的な仕組みのようにも見えるのですが、その実、この構想には、極めて深刻な問題が待ち受けています。参加国の顔ぶれのほとんどが、日本国との間に領土問題を抱え、潜在的には敵国となり得ることは言うまでもないことです(電力網を切断された時点でお手上げに…)。そうして、この構想が、再生エネ法と矛盾することもまた確かです。何故ならば、原子力によるものであれ、火力によるものであれ、外国から自由に安価な電力が購入できるのであるならば、再生エネルギーを普及させる必要性がなくなるからです。市場の開放度によっては、日本国の電力供給は、全て外国の電力会社によって賄われることになるかもしれません。

 次から次へと一貫性のない構想を持ち出されては、日本国のエネルギー政策が混乱します。孫氏の最終的な目的が、後者のアジア・グリッド構想にあったとしますと、再生エネ法の推進とは、一体、何であったのでしょうか。

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