時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

国公立大学二次学力試験廃止案―人物重視とは?

 政府主催で開かれている教育再生実行会議では、大学入試の1次試験にランク評価制を導入する案に次いで、国公立大学の2次試験で学力試験を廃止する案も検討しているそうです。”学力より人物”、ということなのでしょうが、この改革案、不安要因に満ちています。

 そもそも、知能と人格のレベルは必ずしも一致するわけではなく、頭は良くても性格に問題がある人は少なくありません。また、逆に、頭はそれほど良くはないけれども、人柄がすばらしい、という人もいます。人物評価に比重を移しますと、前者は振い落されてしまうのですが、学問の発展を考えますと、この基準には疑問があります。人物評価の基準として、高校時代のボランティア活動の実績なども挙げられていますが、知的能力の高い人は、得てしてコミュニケーション能力は低く、”おたく”の傾向にあります。人物評価では、社交的で活動的な受験生に有利なのです。また、人物評価では、主観や”コネ”が働く余地が格段に広がります。2次試験の論文の課題で思想傾向を問うこともできますし、ある集団に属している、あるいは、有力者の推薦がある…、といったことで評価が高まりますと、入学が許可される学生に偏りが生じ、公平性も損なわれます。

 以上の問題点は一部に過ぎませんが、人物重視への転換が、道徳や人間性に関する教育が疎かにされてきたことへの反省に基づくならば、それは、大学入試で評価することではなく、初等教育から高等教育までの全教育過程を通して育まれるべきなのではないかと思うのです。善き人間性は、全ての人々に備わるべきものなのですから(大学入試に組み込むと、偽善者が増えるだけ…)。

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