時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

仏襲撃事件-暴力の効果を認めてはならない

 フランスで発生したイスラム過激派による襲撃事件は、イスラム国が中東を揺るがしている矢先に起きたため、全世界に衝撃が走ることとなりました。この事件に関連して、幾つかの記事を読んだのですが、中には、首を傾げざるを得ないものもあります。
 
 そに一つに、”問題の根本的な解決には、(1)イスラム批判を禁じることと、(2)イスラム教の政教分離を実現することの二つがあり、両者とも近い将来実現する見込みはないので、(3)一般の人々によるイスラム批判とイスラム側の暴力の相互抑制によって均衡状態が保たれる”という趣旨の意見がありました。政教分離によってテロがなくなるとも思えず(詳しい説明がない…)、また、解決を二つに絞るのも極論なのですが、(3)の均衡論では、自己抑制であれ、結局、暴力や脅迫の効果を認めています。その行き着く先には、”イスラム国家の承認”というシナリオもあり得ないわけではなく、イスラム国家による残虐行為も不問に付されかねなません。一度、暴力や脅迫に屈しますと、言論や表現の自由は失われ、得てして暴力がなくなるのではなく、逆に、暴力主義が蔓延るものです。
 
 今回の事件で犠牲となられたステファヌ・シャルボニエ氏は、「ひれ伏すよりも立って死ぬ」と語っており、暴力や脅迫を怖れず、命を賭して仕事をなされました。上記の論者の方は、あくまでも批判精神を貫く人々がおり、言論や表現の自由とは、命をかけても守るべき価値であることを忘れているのではないでしょうか。
 
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