時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

日本国建国に見る立憲主義の芽生え

 本日は、建国記念日です。世論調査によりますと、日本国民の2割未満しか建国記念日を知らないそうなのですが、建国においてこそ、今日まで続く日本国のあり方の基本的な方向性が示されております。

 『日本書紀』が語るところによりますと、即位を前にした神武天皇は、所信表明の如く、立国の方針を宣言しておられます。特に重要となるのは、「夫大人立制 義必随時 苟有利民 何防聖造」の部分です。意味としては、”大人(ひじり)が制(のり)を制定すれば、必ず義に適うものとなり、民の利益となるものは、聖の造(わざ)と防(たがう)ことがあろうか”となります。”制”とは、憲法にも通じる法や行政、あるいは、国家の制度とも読み取れ、神武天皇が、道理や正義に適った制度の下に運営される国をめざし、しかも、国民の利益の実現を第一に考えていたことが分かります。言い換えますと、当時にあって立憲主義が既に芽生えていたのであり、国民の利益を最優先とする姿勢は、民主主義の萌芽としても理解されます。

 武力で権力者に上り詰めた者の多くは、国家や権力を私物化して専制を敷き、国民を虐げる場合が多々あるのですが、日本国の歴史において、過酷な苛斂誅求で国民を苦しめる独裁者が出現しなかったのは、建国に際しての神武天皇の誓いがどこかで作用していたからなのかもしれません。

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