時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

安保法案違憲論の不誠実-特定の解釈支持なのでは?

 衆議院憲法審査会に招かれた三名の参考人をはじめ、憲法学者の方々が、相次いで安保法案を”違憲”と断言したことで、当法案の行くへには不透明感が漂うようになりました。ところで、この憲法学者による”違憲判定”、国民に対して不誠実ではないかと思うのです。

 参考人の一人であった長谷部氏によりますと、95%もの憲法学者が安保法案は”違憲”と見なしているそうです。厳正なアンケート調査の結果であるのか、否かは、分かりませんが、この”違憲判定”には、一つの重大な前提条件が抜け落ちております。それは、”特定の憲法解釈によれば”、という前提条件です。憲法第9条には、実に幅広い解釈が存在していることは、憲法学者が最も良く知るところです(例えば、A説は、A₁説とA₂説に分かれ、さらにA₁説には、A'₁説とA"¹説があるというように…)。現状では、憲法第9条の解釈に関する学説は一致していないのです(その他に、政府解釈や最高裁判決の見解も存在…)。仮に、安保法案に対する違憲論があるとしますと、それは、確定した不動の基準に基づくものではなく、あくまでも、多々ある解釈の内の一つに依拠しているに過ぎません。そして、憲法解釈は、変更が可能ですので、合憲となる解釈も当然にあり得るのです。

 ですから、憲法学者違憲判定を以って、安保法案=違憲とするイメージが広がるとしますと、それは、世論をミスリードする恐れがあります。憲法学者の方々は、少なくとも、”安保法案は違憲”と断言するのではなく、”安保法案が違憲となる特定の解釈を支持している”と正確に述べるべきなのではないでしょうか。

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