時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

東大推薦入学-”傾向と対策”で無意味に?

 鳴り物入りで始まった東大の推薦入学。先日、日経新聞の一面に、今年、当入学枠で合格した学生を紹介する記事が掲載されておりました。この記事を読みますと、この制度、狙い通りの成果を上げることができるのか、疑問なところです。

 記事によりますと、合格した学生は、福島第一原発事故の被災地となった福島県の出身であり、故郷の復興にかける熱意が評価されたようです。加えて、高校時代には、中国の同時代の学生との交流事業に参加しており、こうした国際交流も合格の決め手となったのでしょう。今年は一年目ですので、合格者の情報は限られています。しかしながら、、数年にわたって実施されますと、蓄積された情報により合格者の”傾向”が分析され、推薦入試を受ける側も、この”傾向”に合わせた”対策”を施すようになるはずです。例えば、○○のボランティアとか、□□国との親善活動とか、△△での支援活動といった経験が、重要な評価基準であることが分かれば、これらの基準に合わせて自らの高校生活のスケジュールを組み立てる高校生が現れても不思議ではありません。この結果、独創的で、尖った才能を持つ学生を集めたつもりが、マニュアルに従順な凡庸な学生ばかりが合格する結末ともなりかねないのです。

 また、今回合格された学生の方は、中国との交流が評価されていますが、合格者が、特定の国の関係者に偏るとなりますと、推薦入試枠は、事実上、この国に対する優遇策となるリスクもあります。仮にこのような展開となった場合、一般の受験生のみならず国民もまた、この制度に納得するとは思えないのです。

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