時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

安倍政権の”ナチス認定”の基準とは?

 ネット上では、安倍政権に対して、”ナチス認定”し、極めて危険な政権であるとする意見が散見されます。ところで、この”ナチス認定”、何を基準としているのでしょうか。

 ナチス政権の特徴とは、(1)政治においては、一党独裁、並びに、ベルサイユ体制の打破と東方への版図拡大であり、(2)経済においては、反共産主義と反新自由主義(金融支配)に基づく”生存圏”の確立であり、(3)社会においては、ゲルマン民族優越主義を基調としたノスタルジックな全体主義として凡そ纏めることができます。ユダヤ人迫害は、反金融支配とゲルマン民族優越主義に起因しています。

 それでは、安倍政権には、これらの特徴が当て嵌まるのでしょうか。(1)政治的には、一党独裁体制は、中国の国家体制であることは言うまでもなく、ベルサイユ体制ならぬ、サンフランシスコ体制の打破を狙っているのも中国です。今や、習政権は、南シナ海周辺諸国に対する領土的野心を隠そうともしていません。政治的にナチスに準えるべきは、中国なのです。(2)それでは、経済ではどうでしょうか。安倍政権は、むしろ、新自由主義的な政策を採りいれていますので、この点は、ナチスとは違っています(むしろ、新自由主義的な方向性が危惧されている…)。TPPも締結したのですから、”生存圏”の確保を求めているわけでもありません。(3)また、社会的にも、日本民族優越主義を積極的に鼓舞してはおらず、英語教育の充実など、グローバル主義的な側面も見られます。国民の自由を束縛する全体主義と言えば、むしろ、中国の方が余程この体制に近いのです。

 となりますと、唯一、安倍政権が”ナチス”と共通する特徴があるとしますと、反共産主義ということになります。しかしながら、反共産主義のスタンスは、少なくとも戦後の自由主義諸国に共通した立場でもありますので、安倍政権の”ナチス認定”の根拠とはなり得ません。”ナチス認定”は、共産主義勢力によるイメージ戦略と見なすのが妥当ではないかと思うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。