時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

‘世界は一つ’という認識の問題:‘世界は一つ’という認識の歴史的形成過程(その1)

 地政学的思考geo-political thinkingは、地球規模で物事を考える思考ですので、この思考は、‘世界を一つ’という認識を基盤としています。このことは、‘世界は一つ’という意識の重要性を示しているのですが、それでは、人類史上、‘世界は一つ’とする認識・意識は、どのようにして形成されてきたのでしょうか。数回にわけて、この疑問につきまして本ブログにて述べてまいります。

 

 先史時代の人類は、小集団に分かれて世界各地に居住しており、「自分たちが住む世界が、無限大であるのか、有限大であるのか」を認識することは難しかったと考えることができます。徒歩でたどり着ける範囲は限定的であったでしょうし、自分たちの住む範囲以外の空間に対してどれほどの関心を持っていたのかも定かではありません。また、当然のこととして、当時の人々は、地球が球体であることに気づくはずもありません。

 

 確認し得る範囲で、‘世界’の形状に対して、初めて関心を示したのは古代ギリシャ人です。ピタゴラス学派のフィロラウス・クロトンPhilolaus of Croton (c. 470 – 385 BC)とヘクタスHicetas (c. 400 – c. 335 BC) は、「地球は球面体であり、‘神秘的な’中心となる炎の回りを回っており、この炎が宇宙を規律している」と唱えました。そして、この説の影響を受けた天文学者であって数学者であるアリスタルコスAristarchus of Samos(c. 310 – c. 230 BC)が、「地球は太陽のまわりを公転している」とする所謂「地動説Heliocentrism」を提唱し、ギリシャ・ローマ時代の天文学において広く認められるところとなるのです。

 

 歴史の教科書では、地動説はコペルニクスCopernnicus(1473-1543)によって初めて唱えられたと記述されておりますが、本当は、その千数百年も前に既に唱えられていたのです。