時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

現代にも通じるカエサル暗殺の発生原因

本日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が、記事を書かせていただきます。一昨日、『クレオパトラ』という米国映画について扱いましたが、この映画は、なぜ、カエサルは暗殺されたのか、その理由を端的に描いていたようです。すなわち、共和制ローマ独裁制エジプトは、仮に両国を統合しようとする動きが生じれば、必然的にローマは内紛とならざるを得なかったのです。
 
紀元前1世紀、ユリウス・カエサルが政治的・軍事的権限の多くを掌握しつつも、有力政治家の一人に過ぎず、ローマは今日の議会にあたる元老院を有する共和制でありました。一方、エジプトはファラオによる独裁制でありました。このように政体の異なる二ヶ国が統合することは、そもそも不可能なことでした。ところが、ユリウス・カエサルが、この不可能であるはずの国家統合を行おうとしたのです。
 
その方法は、カエサルが、エジプトの女王クレオパトラとの間にもうけた庶子・カエサリオンを「ローマ皇帝兼ファラオ」の地位に就けるという方法です。すなわち、ローマにおいては、カエサルが、選任制の終身ディクタトルの地位から世襲制ローマ皇帝の地位に昇る途上にあり、一方、エジプトにおいては、エジプトの女王の子であるカイサリオンをファラオの地位に就くことは必至でした。このことから、仮に、カエサルローマ皇帝となった場合、カエサルが、その皇帝位をカエサリオンに継承させることさえできれば、カエサリオンは「ローマ皇帝兼ファラオ」となり、両国は統合されたのです。
 
しかしながら、予測されてくるこのような事態は、明らかに共和制ローマが、独裁国家に変貌することを意味し、ローマ市民には、到底、容認できない事態でした。ローマは、かつては王制でしたが、紀元前509年に当時の国王を追い出して共和国となっております。このことに示されますように、ローマの人々の大多数は、共和制を支持しており、カエサルクレオパトラ、カエサリオンの3者によってローマに独裁制が敷かれるようになることを、ローマ市民は何としても阻止したかったはずなのです。映画にも、カエサルがカエサリオンに独裁者教育を施すシーンがありました。このように、当時、共和制ローマは、カエサルによって実質的な滅亡の危機が齎されていたのです。
 
加えて、エジプトは共和制ローマによる被征服地であり、ローマはエジプトにまで、その勢力範囲を拡げたにもかかわらず、庶子・カエサリオンをエジプトの女王との間にもうけるというカエサルのプライバシーによって、逆に、ローマが、エジプトによって征服される事態となりかけていた、とも言えるでしょう。史実とは異なる脚色ではありますが、映画には、ローマで行われたカエサル凱旋式で、被征服地の各地の人々がローマへの服属を表現するアトラクションを次々に催してゆくシーンがありました。その最後で、クレオパトラとカエサリオンが巨大な黒いスフインクスを背にして、ピラミッドの上に乗って凱旋門から登場し、カエサル元老院議員達を見降ろすといったシーンがありました。映画は、エジプトの立場が、服属者から征服者へと変わっていることを、こうしたシーンで表現したのでしょう。
 
映画『クレオパトラ』には、ブルータスが、「ローマを救ってくれ」と懇願されるシーンがありました。カエサルが、世襲制ローマ皇帝の地位に昇る前に、ローマ側には、どうしてもそれを阻止する必要があり、その結果として、カエサル暗殺事件がおこったと考えることができるのです。
 

今日でも、北朝鮮、韓国に加えて日本国をも含んだ「高麗連邦構想」なる謀略的計画が、統一教会イルミナティーの下部組織)によって進められているそうです。ローマの歴史に学びますと、特に民主主義国家側において大きな反対運動や内紛が発生する可能性があります。独裁国を含む地域の統合においては、民主主義国家側が独裁国化する可能性が高いのですから、「高麗連邦構想」はあきらめていただきたいものです。


 

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(続く)