時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

政府は中長期的ワクチン薬害訴訟への対応策を説明すべき

 新型コロナウイルスワクチンにつきましては、接種時におけるアレルギー反応に関心が寄せられ、政府は万が一死亡した場合には、薬事法にもとづき4,420万円の被害補償を行います。

 

 しかしながら、ワクチン接種のリスクは、むしろ、10万人にひとりとされる接種時における強いアレルギー反応ではなく、中長期的未来におきまして、発生する性格のものです。今般のm-RNA型ワクチン(COVID-19対応の遺伝子ワクチン)の副反応につきましては、日本感染用学会が以下のように指摘しております。

 

 「ワクチンによる直接的な副反応とは言えませんが、接種を受けた人が標的とした病原体による病気を発症した場合に、接種を受けていない人よりも症状が増悪するワクチン関連疾患増悪(vaccine-associated enhanced disease, VAED)という現象にも注意が必要です。過去には、RS ウイルスワクチンや不活化麻疹ワクチン導入時に実際にみられています。またデング熱ワクチンでは、ワクチンによって誘導された抗体によって感染が増強する抗体依存性増強(antibody-dependent enhancement, ADE)という現象の可能性が疑われ、接種が中止されました 14)。COVID-19 と同じコロナウイルスが原因である SARS重症急性呼吸器症候群)や MERS(中東呼吸器症候群)のワクチンの動物実験でも、一部にVAED を示す結果がみられています。COVID-19 ワクチンの動物実験臨床試験では、これまでのところ VAED を示唆する証拠は報告されていませんが、将来的に注意深い観察が必要です」と指摘しております。

 

 ワクチン関連疾患増悪や抗体依存性増強というリスクがあり、こうしたリスクは、接種によって体内に抗体がつくられた後に発生してくるのです。このことは、接種時ではなく、近い、もしくは遠い将来におきまして、政府を被告として、薬害訴訟問題が生じる可能性を示しております。

 

 ワクチン接種者全員にこのようなリスクが生じるわけですので、将来における薬害訴訟問題の発生への対応策を立案せずに、ワクチン接種を開始させることは、極めて深刻な問題であると考えることができます。国民皆接種(およそ1億2千万人)を目指す政府の方針によって多くの国民がワクチン接種し、中長期的未来に薬害訴訟が発生し、被告の国が敗訴した場合の死亡や後遺症をめぐる被害補償総額は、国家が事実上破産することを意味します(ワクチン接種による心理的不安やストレスも補償対象となる可能性も)。

 

 仮に、国家破産しないようにしようといたしますと、政府が被害補償額と同額となる税金を国民一人一人から緊急徴収し、そのままその額を納税者に還付する形での補償となると考えられますので、事実上、被害者は救済されないことになります(自分で自分の被害を補償することとなり、結果、被害者は救済され得ない)。また、仮に接種者の人数が、接種の既に始まっている医療従事者などの先行接種者の500万人にとどまったとしても、その被害補償額は、莫大であり、国庫の大きな負担となって、財政赤字の拡大や増税に繋がります。

 

 このように考えますと、接種時のみの薬害を問題視している政府による今般の‘見切り発車’的なワクチン接種の開始には、将来における大きな国家的危機が、既に潜んでいると推測することができます。

 

 政府は中長期的ワクチン薬害訴訟への対応策を速やかに策定し、国民に対して説明すべきであり、国民が納得するようなきちんとした説明ができるまでは、接種を停止すべきであると言えるでしょう(仮に、政府が、中長期的薬害については被害補償しないと決定すれば、ワクチン接種希望者は、減少すると考えられますので、この問題につきましては、政府は至急に対応すべき。また、逆に、補償すると決定すれば、接種希望者は増えますが、中長期的薬害訴訟が発生した場合の被害賠償の財源につきましても、説明すべきと言えましょう)。