時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

消費税上げでマイナス乗数効果は発生する?

 政府とは、政策を実施するに当たって、政策効果に関するあらゆるシナリオを想定して準備するものです。麻生首相は、3年後の消費税上げを目指しているとのことですが、懸念材料もたくさんありそうなのです。

 定額給付金を実施するに際しては、マクロ経済学から、しばしば”乗数効果”が持ち出されてきました。これは、政府が、ある一定額の支出を行った場合、消費のたびに所得が生まれ、消費が繰り返されることで最初の額の数倍に達するというものです(この理論によれば、貯蓄は望ましくない・・・)。もし、この理論が正しいとしますと、政府支出の減少によるマイナスの乗数効果もあり得ることになります。増税とは、たとえ政府の支出を減らさなくとも、すべての国民の所得を減らす行為ですので、乗数倍に所得が縮小してしまうかもしれないのです。そもそも、乗数効果については、政府の財政出動の擁護論に用いられたため、政府支出に限定されていると見なされがちですが、論理的には、すべての支出について当てはまるはずです。

 国民所得の減少が景気を後退させるとしますと、消費税上げが良策であるかは疑わしいところです。定額給付金を支える理論が、消費税上げを否定してしまうとは、何とも皮肉なことと思うのです。

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